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Monthly Special

遠く、インドで生まれた、物語を宿す布

text: AI WATANABE


首都デリーから、南へ約300キロに位置するジャイプール。通称「ピンク・シティ」と呼ばれ、ピンク色に染まった建造物が立ち並ぶ、幻想的な風景のこの街は、手仕事による、繊維産業が盛んな地域でもあります。

キルキーの世界観を語る布も、ここ、ジャイプールが主な生産地。熟練の職人の手作業により、小さな工場で日々、コツコツと作り上げられるテキスタイルは、それぞれにかすれやにじみ、色の濃淡が異なり、人間らしいぬくもりと愛おしさにあふれた1枚に仕立てられます。

木版にインクをのせ、スタンプするブロックプリント

木版にインクをのせ、スタンプするブロックプリント

大きなシルクスクリーンの版

プリント方法は、木版のブロックを用いたブロックプリントと、畳一畳ほどの版を使い、ふたりがかりで仕上げるシルクスクリーンプリントの2種類。どちらの技法も、毎日版に触れ、感覚を身体で覚えた職人だからこそ成せる、繊細な技術が必要です。

大きなシルクスクリーンの版

 

ブロックプリントとは、手彫りの木版のブロックをひとつひとつ、布に押していき、1枚の布にする手作業。ブロックを布から離した時に飛び散るインクが、プリントに味わいをもたらす一片でもあります。

木版は全て手彫り。木が反ってしまうため、手のひらサイズ以上のものは作れません。
 

木版は全て手彫り。木が反ってしまうため、手のひらサイズ以上のものは作れません。

シルクスクリーンは木のへらを滑らせて、インクをのせていきます。

シルクスクリーンプリントは、ふたりがかりで大きな版を扱い、1色ずつプリントする技法。使う色は、1枚の版につき1色で、いろを重ねていくことで、ひとつのデザインが完成するという根気が必要な作業。

シルクスクリーンは木のへらを滑らせて、インクをのせていきます。

 

色作りもまた、職人の勘が頼り。レシピなどは一切なく、バケツに用意したインクをフィーリングで混ぜて調整していくのすが、そのとき、試し塗りするのは工場の壁。作った色の分だけ、カラフルに塗り替えられる壁は、おおらかに暮らし、働く、職人たちらしさを表しているかのようです。

さまざまな大きさのバケツに用意されたインク。
 

さまざまな大きさのバケツに用意されたインク。

シルクスクリーンは木のへらを滑らせて、インクをのせていきます。

インドの伝統手法のプリントは、自然のエネルギーとひと続き。洗いにかけられた布は天日干しに。天候にも左右され、タンブラー乾燥よりも手間はかかりますが、日光に当てることで、色鮮やかに発色します。砂漠地帯であるジャイプールで受け継がれるこんな知恵も、今のものづくりに活きています。

色の境界線のやわらかいにじみは、どこか優しく、均一でないわずかなズレは、機械では決して表現できない、独特の面白さが。布はまさに作り手の、磨かれた技と想いを届けるメッセンジャー。
ブランドの発足当初から、今も変わらず、インドの伝統手法のプリントにこだわる理由は、そんな、表情豊かなテキスタイルを求めているから。
1枚として同じものがない、ハンドメイドの布に触れれば、インドから始まる、遥かなストーリーを感じるはずです。

 

 

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